2012年1月23日月曜日

何かロマンティックな言葉

渋谷を歩いていると隣にタイムマシンが止まった。
窓が開き、中から美しい女性が顔を見せ、「はやく乗って」と僕を誘った。

彼女はタイムマシンを走らせると、世界の始まりと終わりを簡単に見せ、後はほんの少しだけの希望とたくさんの絶望をゆっくりと見せてくれた。

タイムマシンは渋谷に戻り、彼女はこう言った。
「どう思った? 分析はダメよ。何かロマンティックな言葉をひとことだけ言ってみて」

僕はちょっと考えて
「世界はとても悲しいですね」と言ってみた。

すると彼女は
「残念、不合格!」と言って消えた。

小さい風

部屋の外で何かが「カサコソ」と音をたてた。

なんだろうと思った僕はそっと扉を開けてみると小さい風が入ってきた。

小さい風は入ってくるなり
「ねえ、先生に見つからないように、しばらくここで隠れてて良い?」と言った。
僕は驚いて
「先生って?」と聞くと、
「風の先生だよ。僕が強い風になれないからとても厳しいんだ」 と答えた。

「風の世界にも色々あるんだね」
「僕のお母さんは結婚前はずっとミス春一番だったし、お父さんは台風で四国を大洪水にして雷様から勲章をもらってるんだ。だから『おまえもやれば出来るはずだ』って先生がうるさくって…」

「そうか、それで君は大きくなったらどんな風になりたいの?」
「優しい風がいいな。夏のスコールの後に海から吹いてくる涼しい風とか、秋から冬にかけて都会に吹くちょっと冷たい風とかさ。で、女の子が『寒い!』とか言って彼の腕に寄り添ったりするんだ。その後、今年のクリスマスの予定の話なんかしてくれたら『風に生まれてきて良かった』って思うよ」

「君は『ロマン派の風』なんだね」
「何その『ロマン派の風』って?」
「いや今ちょっと思いついて言ってみたんだけど」
「その言葉、良いな。ねえ、強い風だけが偉いのっておかしいよね。僕『ロマン派の風』になることに決めたよ。今日はありがとう。君に会えて良かったよ」
そう言うと小さい風は風になって僕の前から消えた。

月から見る地球

月から見る地球は青くて可愛い。

僕は月旅行の思い出にこの地球をペンダントにして持って帰ろうと思いついた。

東京で待っている彼女の白い肌にとても似合うだろうな。

地球にそっと手をのばし、人差し指と親指で北極と南極をはさんだ。
すごく冷たい。

僕は誰も見ていないうちにそっと鞄に入れた。