2013年5月5日日曜日

僕の三つの良いところ


20年前の当時、みんなのアイドルだった彼女が僕のような何でもない男の求愛を受け、そして結婚してくれた。

そのことについて、当時の彼女の友人たちはすごく不思議に思ったみたいで、みんなが彼女に「どうしてあの人を選んだの?」と質問したらしい。

彼女が死ぬ前日にその当時のことを楽しそうに話してくれた。

「どうしてだったの?」と僕が聞くと、彼女は病院のベッドの中でこう答えた。

「あなたには三つの素敵なところがあったの。どこでも寝られること、誰かの悪口を言わなかったこと、そして世界で一番誰よりも私のことを好きだったこと」

「最後のはどうしてわかったの?」

「あなたの顔に書いてあったわ」

「今でも書いてある?」

「書いてあるわ。あ、泣かないで。消えてしまうから」

夢の旅


あの頃は真夜中になると、色んな人達の夢の中を渡り歩いた。

毎晩ケーキ工場に忍び込んで苺を盗んで逃げる銀行員の夢。

まるで風船に針を刺すように「パン!パン!」とみんなの心臓を破裂させながら散歩をしている売れっ子モデルの夢。

誰も座っていない椅子に向かってずっと謝っているトロンボーン吹きの夢。

そして僕はある夜、年老いた犬の夢の中で美しい女性に出会った。

彼女は誰もいない公園でブランコをこぎながら小さい声で歌っていた。

それは僕の知らない曲だったのだけど、とても懐かしい気持ちになった。

僕は彼女に「君も夢の旅をしているの?」と聞いてみた。

すると彼女が「私はこの犬の夢の中に住んでいるの。でも、もうこの犬は死にそうだからその後私はどうなるのか心配で」と答えた。

それで僕は彼女を夢の旅に誘った。

僕は彼女の手を取り犬の夢から抜け出し、太平洋に浮かぶ大きな鯨の夢の中に飛び込んだ。

ずっと後ろの方で年老いた犬が悲しい声でないた。

ある紳士との出会い


親戚のおじさんに頼まれて、画廊の店番をしていると、立派な身なりをした紳士が入ってきた。

そしてその紳士が僕に向かって「いらっしゃいませ」と言った。

僕は突然のことにちょっと面食らっていると、紳士が「あなたは太いですな」と言った。

僕が「そんなことないです。失礼な」と答えると、

紳士が「いえいえ、そんな体では日々、動き回るのも困っているはずです。どうでしょう。私に任せなさい」と言った。

すると僕は海の中に飛び込んだ。

僕は太ってたおかげで沈むことなくプカプカと太平洋に浮かび、潮に流されて沖に出た。

遠くの方で紳士が「いらっしゃいませ」とお客様に笑顔で接客しているのが見えてほっとした。