2013年2月10日日曜日

ドラえもんのタイムマシン

ドラえもんが僕の机の引き出しから突然出てきてこう言った。
 
「このタイムマシンを貸してあげるよ。過去に行って君が歴史を変えてくればいいんだ」
 
僕が驚いているとドラえもんが勝手に5年前に設定して僕は突然ぽんと2008年の東京に落とされた。
 
僕が困っていると「何をしてるんだ。君は地震が来るのを知ってるんだろ。今からいろんなことをみんなに呼びかけなきゃ」とドラえもんが言った。
 
僕はドラえもんにこう言った。
 
「ねえドラえもん。他の道具を貸してくれないかな。僕ひとりじゃ、どうにも出来ないよ」
 
するとドラえもんが「そうか。ダメだなあ。じゃあ次はもっと昔に行こう」と言ってまた勝手に100年前に設定して僕は1913年の東京にぽとんと落とされた。
 
僕が途方にくれているとまたドラえもんが「ほら。君が日本を止めないと」と言った。
 
僕は「僕だけの力では無理だよ」と言った。
 
するとドラえもんは2013年に僕をぽとんと落としてこう言った。
 
「じゃあ君は2013年に何をするんだい?」
 
僕はため息をついた。

どっちが好き?

初めて彼女とベッドに潜り込んだ夜。
 
いろんなことが終わり。
 
彼女が突然カーテンを開けて夜空に浮かぶ月を眺めながらこんなことを僕に質問した。
 
「ねえ、『明日は遠足』というのと『明日から夏休み』というのとどっちが好き?」
 
僕は彼女の髪の毛を触りながらしばらく考えてみた。
 
「明日が遠足」のあのドキドキした気持ち。
 
「明日から夏休み」のあの解放された感じ。
 
夏休みは小さい僕にとって永遠のように長く感じるけど、いつか宿題を片づけてあの教室に戻らなければならない。
 
遠足。
 
しおり。
 
おやつ。
 
バス。
 
隣に座る女の子。
 
僕は「『明日が遠足』の勝ちだね」と彼女に答えた。
 
すると彼女が微笑んで「では二つ目の質問です。『明日が世界の終わり』と『明日から世界が始まる』とではどっちが好き?」
 
僕は彼女の華奢な肩を抱き寄せながら考えた。
 
「明日が終わり」で彼女とベッドに潜り込んでいる時間。
 
でも「明日から世界が始まる」って僕らはどこにいるんだ?
 
僕は暗闇の中でまだ何も始まってなく彼女も僕も、このベッドも月もない世界を想像する。
 
僕は「『明日で世界が終わる』の方が僕は好きかな」と答える。
 
彼女は僕に飛びついてきて「そう言ってくれると思った」と言って僕の首のあたりを「くんくん」と嗅いだ。
 
どうやら彼女の質問に合格だったみたいだ。

白くて可愛いシッポ

白くて可愛いシッポが生えてくる初夢を見た。
 
それで神様に電話をして夢の内容を詳しく説明した。
 
すると神様が「おお、白いシッポの夢か。久しぶりに耳にしたなあ。羨ましいなあ。なーに、今すぐお迎えが来るから待ってなさい」と電話口で明るく語った。
 
受話器を置くと僕の家の扉の外で誰かが喋っているのが聞こえた。
 
「ママ、やっぱり僕がノックしなきゃダメなの?」
 
「そうよ。ママやパパが突然ドアの外でいると大きくてびっくりするでしょ」
 
そして「トントン」と可愛いノックの音がした。
 
ドアを開けるとそこにはシロクマの親子がいた。
 
僕が驚いているとシロクマの男の子が僕の手をとって「山に行こう」と言った。
 
山での生活は楽しかった。
 
僕らは鮭をとったり、木の実を集めたりして冬に備えた。
 
男の子がある日、川縁で「僕、ホントは絵描きになりたいんだ。シロクマのくせにそんな夢っておかしい?」と言った。
 
僕は「そんなことないとおもうよ。絵描きのシロクマって素敵だと思う。ママやパパも喜んでくれると思うよ」と言った。
 
その時、銃声が響きわたった。
 
隣のシロクマの男の子の頭からは血が流れ、まるでヌイグルミのようにぱたりとそこに倒れ込んだ。
 
そして猟師がこちらに向かって歩いてきた。
 
僕は猟師に襲いかかりズタズタにしてやった。
 
僕はもう山を降りない。

月への架け橋

月って実際、手で触ってみると冷たいのかそれとも温かいのか。
 
パッと見は冷たそうなんだけどやっぱり発光しているんだからそれなりに熱さはあるはず。
 
触ってみるとヤケドするのかな。
 
それとも寒い日に手がちょうど暖まるくらいなんだろうか。
 
なんてことをパソコンの画面にカチャカチャと打ち込んでいたら、
 
「君もそう思うのかい?」と声がしたので、
 
え? と思うとキーボードのそばで小人がパソコン画面と僕とを交互に眺めていた。
 
僕が「あ、うん。まあ、なんて言うか。そういう詩のような…」とごにょごにょ言ってると
 
小人が「なんだ夢のない奴だな。せっかく僕らの計画に参加させてやろうと思ったのに」と言った。
 
「計画って?」
 
「待ってて」と小人がキーボードをいくつか両足で押してどこかの荒野の画像に飛ばせた。
 
「僕ら月への架け橋を造っててそれがそろそろ月に到着しそうなんだ」
 
「でも僕には何にも見えないけど」
 
「まあね。もし見えたら君たち人間がすぐに嗅ぎつけちゃうからさ」
 
「それで?」
 
「君は月が冷たいのか温かいのか知りたいんだろ?」
 
「うん」
 
「僕らもずっとそれが気になってるんだ。それで触りにいこうかなって思って。君もおいでよ。同じ気持ちだったら人間でも歓迎だよ。そういう人間って全然いないんだ」
 
そんな風にして僕は小人たちと月への架け橋を渡り始めた。

ミニチュアライオン

今はミニチュア・ライオンを飼っているんだけど。
 
うん、猫科だからね。
 
性格とか行動とかは猫みたいなもんだよ。
 
うちはオスを飼ってるんだけど。
 
やっぱり昼間は草原っていうか、うちのふわふわの絨毯で寝転がって偉そうにふんぞり返ってるよ。
 
やっぱり百獣の王って意識は小さくてもあるんだろうね。
 
うん、トイレは猫と同じ。
 
ちゃんとしつけていつもの場所でさせてるよ。
 
問題は餌なんだよね。
 
ほら、ライオンってシマウマを食べるじゃない。
 
もちろんミニチュアシマウマって高いから、うちは安い白ネズミにマジックで黒いシマを書いてるの。
 
うん手作り。
 
全然、騙されてるよ、あいつ。
 
「ガオー!」とか言って嬉しそうに食べてるよ。

人魚の恋

人魚がある人間の男のことを好きになった。
 
人魚は男のために歌い、男を人魚の虜にさせたが、ひとつだけ問題があった。
 
人魚の下半身は魚だったため、人間の男性とは交わうことが出来なかったのだ。
 
人魚は下半身に人間の性器を付ける手術をしたが、人魚の元の姿への回復能力はすさまじかったので、あっと言う間に元の魚の下半身に戻った。
 
それでも男は人魚と交わりたいと言ったので、人魚は男の目を潰し、人間の女をさらってきて声帯を潰し、二人を交わらせた。
 
人間の女が涙を流しているのを男は気がつき、人魚が喜んでいるのだと勘違いした。
 
人魚と男は幸せに暮らした。