「あれ中島さん、今日は一人なの?」という声がしたので後ろを振り向くと、鈴木君が自転車を降りて優しい笑顔を見せていた。
「うん、エミ今日風邪で休みなの」と私が答えると、鈴木君が自転車を押して私の方に近づいてきた。
(ちょっとちょっと、困る困る。だって鈴木君は学年で一番モテる男子で私の親友のエミだって去年のヴァレンタインデーにチョコレートをあげたりしたんだから。)
「あれ?鈴木君、帰り道はこっちで良いの? バス通りの方が近いんじゃなかったっけ」
「うん。でも歩くのだったらこっちの方が色んなお店があるから楽しいじゃない」
(こらこら。遠回しに私と一緒に帰るのはやめてって伝えているのにぃ。鈴木君ってそういうところ意外と鈍感なんだ。)
「中島さん、あの本屋でいつもよくいるよね。本、好きなんだ」
(えー!鈴木君、なんで私のことを見てたの? だって鈴木君って一年のバレー部の女の子と付き合ってんじゃないの? そのこと思い切って聞いちゃおうかな。あ、その前に鈴木君の質問に答えなきゃ。)
「あ、うん。私、絵本が好きなの。ちょっと子供っぽいでしょ」
「中島さん、絵本好きなの?俺もすごく好きなんだ。じゃあ、イチゴ畑のおばあさんの話知ってる?」
(キャー!私それ大好きなの。)
「イチゴ畑のおばあさん? ええと、あの本のことかなあ…」
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