非常ベルの音で目が覚める。
もう今月になって5回目だ。
僕はコートをはおって外に出る。
近所の人たちが何人か出てきているので、僕も近づいて話を聞いてみる。
「今日は誰ですか?」
「今日は角の床屋さんみたいですね」と近所の喫茶店のマスターが答えてくれる。
「消えた人たちはいったいどこに行ってるんでしょうね?」とマスターが言う。
僕は「ええ。不思議ですね…」と無難な返事をする。
しかし僕は消えた人達がいったいどこに行ったのか知っている。
運命の庭だ。
運命の庭のことは、半年前に消えた彼女から届いた言葉で知った。
彼女が突然消えた日から僕は狂ったように彼女を探し回った。
その頃はまだこの現象は普通ではなかったから、ほとんどの人が僕を相手にしてくれなかった。
しかし僕は彼女がどこかにいるはずだ、と信じていた。
いろんな手をつくしたが彼女は結局見つからず、最後に僕は彼女にただただ気持ちを送ることだけを念じてみた。
すると先月の中頃に彼女から小さい言葉が届き始めた。
「今、私たちは運命の庭にいる。
ここには多くの運命があり、私たちはそれを選び夜に投げている。
世界は消えかかっていたけど、今は少しだけ息を吹き返してきたところ。
そう私たちは世界を取り返しているの。
運命をつかみとっているの。
あなたは今は意識を開けて待っていて」
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