おばあさんは毎日毎日、機を織りました。
おばあさんが織る織物は美しいことで有名だったので、都では大変人気でたくさんの女性が「私がお嫁に行くときはあのおばあさんの織物で花嫁衣装を作りたい」と望みました。
おばあさんはそんな気持ちに答えるために毎日、美しい花嫁を想像しながら織りました。
おばあさんはこの歳までずっと独身でした。
しかし、昔一度だけ大きな恋愛をしたことがありました。
相手は若くて立派なお侍さんでした。
まだおばあさんが娘だった頃、機を織っているところに、そのお侍さんはやってきました。
お侍さんは自分がこれから結婚する相手の花嫁衣装のためにおばあさんの織物を注文しに来たのでした。
しかし二人は顔を合わせた瞬間に「この人が運命の人だ」と気づきました。
でも当時はお侍さんと機織り娘が結婚するなんてありえないことでした。
二人は心の中では恋の炎が燃え上がっていましたが、何にも気づいていないふりをしなければなりませんでした。
まだ若い頃のおばあさんは、お侍さんに結婚するお嬢様はどんな方なのか詳しく質問しました。
お侍さんも思いつくままに彼女の説明をしました。
彼女の背格好。
彼女の口癖。
彼女の笑い方。
そして彼女がどれだけおばあさんの織物が好きなのかということも。
そして若い頃のおばあさんは、そのお侍さんの美しい花嫁を思い浮かべながら機を織りました。
私の織った織物だとすごく幸せになれるんだから、と思いながら機を織りました。
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