その女の子は自分が魔法使いだということはずっと隠していました。
学校に遅刻しそうになってもホウキに乗ったりせず必ず普通の女の子として行動しました。
というのは同じ魔法使いのお母さんがこんな話をしたからです。
「昔、大きな津波が来たとき、お婆ちゃんは時間を止めたの。そしてみんなが丘の上に逃げるのを待ってから、その後また時間を戻したの。みんなの命は助かったんだけど津波は町を根こそぎ持っていっちゃって。みんなは、津波はお婆ちゃんの魔法のせいだって言って、お婆ちゃんは火あぶりになったの。どんなことがあっても人間に魔法は見せちゃダメよ」
それでその女の子
は普通の女の子として学校に通い、普通に恋をしました。
その女の子が恋をした相手は星が大好きで、夜の間ずっと天体望遠鏡をのぞいていても飽きないような男の子でした。
男の子は「いつか新しい星を見つけて僕の名前をつけるんだ」というのが口癖でした。
女の子はある日、自分の部屋でその男の子の運命を占ってみました。
もしかして自分の片想いがいつか両想いになる日が来るんじゃないかと期待したのです。
すると、とんでもないことがわかりました。
三日後に男の子が丘の上で星を眺めていると突然、嵐がやってきて、雷がその男の子に落ちるらしいのです。
女の子は男の子に「三日後に星を見に行くのだけはやめて」とお願いしました。
男の子は新しい星がみつかりそうだったので、その女の子のお願いを断りました。
そしてその日がやってきました。
さっきまで夜空に星が瞬いていたのに突然あたりは暗くなり、ぽつりぽつりと大粒の雨が降り始めました。
男の子は傘を持ってきていなかったので、大木に寄り添って嵐が過ぎ去るのを待ちました。
すると「ダーン!」と大きな雷が落ちた音がしました。
男の子はびっくりしましたが、かすり傷ひとつなく無事でした。
その時、空から黒こげになったホウキが落ちてきたのですが、男の子は気づきませんでした。
その日、夜空に星がひとつ増えました。
女の子は星になったのです。
10年後、男の子は新しい星を発見しました。星の名前はなんと、あの魔法使いの女の子の名前でした。
記者会見で「その星の名前はどういう由来なんですか?」と聞かれて、男の子はこう答えました。
「昔、好きな女の子がいたのですが、ある日突然いなくなっちゃったんです。その後すごく探したのですが、みつからなくて。それでいつか新しい星を見つけたとき、その女の子の名前を付けると、どこかでその子が、僕がついに新しい星をみつけたんだ、って気づいてくれるかなって思って」
その日、夜空のある星が少しだけ涙を流しました。
0 件のコメント:
コメントを投稿