夜中に突然彼女が「メリーゴーラウンドに乗りたいなあ」と言いはじめた。
「ほら。映画とかでよくあるじゃない。真夜中の遊園地に忍び込んでメリーゴーラウンドに乗るシーン。真っ暗で誰もいない遊園地なんだけど、突然メリーゴーラウンドにだけ明かりがついて動き出すの」
今から遊園地を貸し切りなんてまさか無理だろうし、遊園地で働いている人間を買収するというのも無理だろう。
でも、可愛い彼女の突然のワガママにも簡単に答えられるのが男の見せ所だ。
僕は何でもないような素振りで「じゃあ出発しようか」と言った。
僕らは車に乗り込み、遊園地のある郊外の方へ急いだ。
僕は真っ暗な遊園地の前に車をとめた。
ダッシュボードからサングラスとピストルを二つづつ出し、彼女にも渡した。
彼女が目を輝かせた。
彼女はこういう危険な冒険が大好きなんだ。
僕は腰を低くして、管理人室の方に歩みを進める。
彼女も真剣な表情で後ろからついてくる。
僕は管理人室の扉を開け、中の男に銃を向け「静かにしろ。言うとおりにすれば命は保証する」と告げる。
男は震えている。
当然だ。
まさか真夜中に銃を持った二人組が入ってくるなんて想像もしていなかっただろう。
彼女が管理人室の壁にもたれこう言う。
「早くメリーゴーラウンドの鍵のありかを吐きなさい。子猫ちゃん」
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