雨が強く降ってきた。
助手席の君が不安そうな表情でこう言う。
「ねえ、このまま運転し続けても大丈夫?」
「大丈夫だよ。降りやまなかった雨は歴史上、一度もなかったんだから。いくら喧嘩をしても仲直りをしなかった僕らがいなかったのと同じだよ」
「変な喩え。でもね、このまま
ずっとずっと雨がやまなくて洪水になったらどうしようとか不安にならない?」
「もし洪水になったら君を連れて高いところに逃げるよ」
「それでも水が追いかけてきたらどうすればいいの?」
「じゃあ、こうしよう。バケツリレーだ。世界中の友達に連絡して、あふれた水を砂漠に持っていこう」
「みんな手伝ってくれるかしら」
「大丈夫。僕はこう見えて友達は多い方なんだ。たぶんたくさんの人がバケツリレーに参加してくれると思う」
「世界中でバケツリレーかあ。今ちょっと想像してみたけど、なんだか素敵ね。でもほら。やっぱりイヤな人っているから邪魔されるかもしれないわよ。途中でバケツを全部ひっくり返す人とかいたりして」
「大丈夫。バケツをひっくり返す人は必ずいつもいるんだ。でもそれよりももっともっとたくさんの人がバケツリレーに参加すれば良いんだ」
「ふーん」
「雨がやんできたようだね。ほら、やまない雨はない。世界は君が思ってるよりもっともっと良いところだよ」
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