少年は山の向こうには海があると信じていた。
でも「山の向こうには何があるの?」と村の者に聞いても、誰も知らなかった。
村の者達は、逆にどうして少年が山の向こうのことに興味があるのか不思議がった。
でも少年は山の向こうには海があり、そこに船を浮かべて漕ぎ出せば遠い世界に行けると信じていた。
村の者達はそんな少年の影響を受ける若者が出てくるのを恐れて、少年をこっそりと殺し、土の中に埋めた。
少年は土の中から魂だけ抜けだし、目標だった山を越えた。
するとそこには自分がいた村と全く同じような村があるだけだった。
少年は落ち込み、自分の村と同じような村を魂だけでさまよい歩いた。
するとその村にもかつての自分と同じような少年がいて、同じようにあの山の向こうには海があると信じていた。
死んだ少年の魂はその少年に乗り移った。
身体の中で死んだ少年の魂は「この世界に海なんてものは存在しない」と説得した。
少年はあきらめ一生をその村で過ごした。
そして世界からまたひとつ海が消えて無くなった。
世界の海は残り少ない。
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