2012年11月17日土曜日

彼女の指輪

彼女との初デートは時間旅行だった。
 
もちろん時間旅行は結構な金額がかかるのだけど、彼女が「一度、世界が作られているところを見てみたいな」と言ってたからちょっと奮発したというわけだ。
 
でもデートは時間旅行にして大正解だった。
 
何もない乾いた土地に大量の水を流し込んで、海を生み出している時は二人で感動してつい涙が出ちゃったし、空に雲を作っている時には彼女もちょっと手伝ったりして可愛い雲をたくさん生み出した。
 
世界は夜を作る頃になってきたので、そろそろ元の世界に帰ろうかと話していると、彼女が指輪をなくしたことに気がついた。
 
「あの雲を作っているときに空に置いて来ちゃったのかなあ」と彼女は言って一度空に戻ったのだけど空はもうすっかり夜になっていて小さな指輪を探すのは到底不可能になっていた。
 
それで一応、雲を一緒に作った天使に「こんな指輪なんだけど」と言ったのだけど、ほとんどあきらめて帰ることになった。
 
帰りのタイムマシンの中で彼女から「お婆ちゃんのお婆ちゃんからずっと女の子だけに代々受け継がれてきた指輪だ」と教えてもらった。
 
そしてその後、僕らは結婚して彼女が赤ちゃんを産んだ。
 
赤ちゃんは可愛い女の子で、産婆さんが「あれ、この子、何か握ってますよ」と言った。
 
そして産婆さんが手を開かせるとそこには彼女の指輪があった。

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