彼女がビルの屋上から手を振っているのが見えた。
ビルは20階はあるだろうか。
何か落ちてきたと思ったら紙ヒコーキが舞い降りてきた。
彼女はもうしっかりこの電気のない世界で上手くやっていく方法を身につけている。
僕は紙ヒコーキを追いかけて、空中でキャッチした。
紙ヒコーキを開けると「今すぐ上がってきて。すごく綺麗だから」と書いてあった。
ビルに入ると、やはりエレベーターなんてものはない。
僕は階段を上がる。
上がる。
上がる。
屋上では彼女が笑いながら手にバレーボールくらいの大きさの月を抱えていた。
「この世界ってみんなにひとつづつ自分用の月がもらえるんだって。育てられるし感情もあるって。あなたのもあるわよ」と言うと夜空から月が降りてきた。
月は白く発光しているのだけど、ぼんやり霞がかかっているようで、そんなに眩しくない。
「月って熱いのかと思ってたら冷たいんだね。育てるんだったら名前とかつけた方が良いのかなあ」と僕。
「もちろんでしょ。私は水とか夜とかに関係した名前にしようと思ってる」と彼女。
「でも太陽が出てきたらどうすれば良いんだろう」
「朝になったら自分の海に沈むらしいわよ」
「自分の海って?」
「私もまだわからないの」
そして僕らは20階のビルの屋上で月の名前を考えながら朝がおとずれるのを待った。
※韓国の女の子二人組のユニット「屋上月光」にはまってしまって、ちょっと書いてみました。
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