リビングの電話がなったので、受話器をとった。
「もしもし。すぎなみ区の中島ナツオ5才です。恋って何ですか?」
そうか。たぶん、子供電話相談室と間違えてるんだ。でも、確かに恋って何だろう。僕も5才のナツオくんと考えてみることにした。
「恋はね、誰かをすごく好きになることなんだ」
「ママのことすごく好きだよ。それは恋なの?」
「それは恋じゃないな。ナツオくんはママにいつでも会えるでしょ。恋はね、めったに会えないんだ。ご飯を食べてるときも、お風呂に入ってるときも、会いたいなってずっと心の中でその人のことを思っちゃうんだ」
「にいがたのオバアチャンのこと、いつも会いたいなって思うよ。デンワをときどきするけど、いつも切るときにこんどお正月に会おうねって話すよ」
「それも恋じゃないな。恋はね、会えない間、その人の色んなことを知りたくなって、メールで質問したり、今だとネットに何か出てないかなって検索して調べちゃったりするんだ。おばあちゃんのことをすごく知りたいってことはないでしょ」
「テレビに出ている好きな女の子がいるよ。その人のこと、パパといっしょにケンサクして調べたよ」
「それも恋じゃないな。恋はね、その人も自分のことを好きだったら良いのになって思うんだ。そして、もしそうじゃなければ、自分のことをその人にいっぱい話して、なんとか好きになってもらおうとしちゃうんだ。そのテレビの人にそんなことはしないでしょ」
「うん」
「よし。じゃあ恋って何なのかまとめてみよう。まずすごく好きなこと。すごく会いたくて、ご飯の時も、お風呂に入ってるときも、ずっとその人のことを考えちゃうこと。その人の色んなことを知りたくなること。そして自分のことを好きになってもらうために、自分のことをたくさん話しちゃうこと」
「恋ってむずかしそう」
「全然難しくないよ。誰でも出来るんだ」
「恋すると、どんなかんじ?」
「苦しいかな」
「いたいの?」
「胸が痛いね。でも良い気持ちだよ」
「ふうん」
「こういう話、得意なんだ。また何かあったら電話してよ」
「わかった」
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