2012年2月6日月曜日

三日月の夜

三日月をぼんやり見ていると月のウサギから電話があり
「退屈ならこっちにおいでよ。いっしょに泳ごうよ」と僕を誘った。

僕は10年ローンで買った宇宙船に乗り込むと月へと急いだ。

月に近づくと「月の川」の川岸でウサギが手を振っている。

宇宙船を降りると僕は上着を脱ぎ、ウサギは大切な懐中時計を足下に置き、川に飛び込んだ。
「ザブン」

僕らは大きい声で「ムーン・リヴァー」を歌いながら川を下った。

水の色が変わり、腰から下あたりが冷たくなってくるとウサギが
「『静かの海』だよ」と言った。

僕が
「確か『静かの海』ってアポロが到着した所だよね」と言うと、
ウサギは怪訝そうな顔で
「アポロってなんだ?」と言った。

「静かの海」は今までいた川よりも浮力があり、手を使わなくても浮いていられる。

「『静かの海』には地球上のたくさんの悲しい思い出や楽しい思い出が流れ込んで来ているんだ。だからそんなみんなの思い出のおかげで僕らは少しだけ世界から押し上げられる」

海から月の夜空を見上げるとたくさんの星が瞬いている。

ウサギが
「彼女にさ、星を集めてそれで花束を作ってプレゼントしてあげなよ。きっと喜ぶと思うよ」と言った。

ウサギは月の夜空にフワリと浮かび上がると僕の手を引いた。

そしてどこからかサンタクロースがもっているような袋を持ってきて 夜空へと羽ばたいた。

僕とウサギは夜空を舞う鳥になり、星を片っ端からかき集め、袋に詰め込んだ。

星が少なくなると夜空はどんどんと暗くなっていく。

僕が心配そうにしているとウサギが「大丈夫」と言ってウインクをした。

そして最後の星を袋に入れると世界は突然、真っ暗になった。

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