満月の夜、10年ローンで買った小型宇宙船に乗って彼女の家に急いだ。
扉をノックすると彼女は20センチだけ開けて
「何?」と言った。
「今日は満月だから月までいっしょに行こうかなと思って」
「私そういう夢の話って、興味ないの」
「あのね、月にはウサギがいてオモチを作ってくれるみたいだよ」
「もう子供だましみたいな話やめてくれる?」
「え? 僕は本気だよ。二人でウサギさんの餅つきを手伝おうよ。ほら、ラジカセも持ってきてるんだ。月に着いたら川べりに行って二人で『ムーン・リヴァー』を聴こうと思って」
「それがロマンティックだと思ってるの? 私そういうの大嫌い」
そう言うと彼女は扉を「バタン」と閉めた。
僕は一人で月に行き、ウサギが作ってくれたオモチを食べながらラジカセで『ムーン・リヴァー』を聴いた。
ウサギが僕の隣に座り
「いつか彼女もわかってくれるよ」と言ってくれた。
暗い夜空に浮かぶ青い地球がとても美しいので、僕は地球を抱きしめた
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