電車の扉が開くと、レモンの爽やかな香りが車内に広がった。
見るとやっぱりレモンの親子だ。
お母さんは40才くらい、娘さんはまだ4才くらいだろうか。
肌のきめ細かい感じとかヘタの形がよく似ている。
お揃いの緑のワンピースがとても素敵だ。
二人は向かい側に座ったので黄色い香りが
僕の鼻をくすぐった。
僕はレモンのあの味を想像してみたら口の中に唾液があふれた。
女の子がさっきから僕の方をチラチラと見ている。
僕はお母さんが見ていないのを確認して、とっておきの「変な顔」を女の子に見せた。
女の子が嬉しそうに笑うと、お母さんが「静かに」と言った。
僕が口に人差し指をあてて
「シーッ!」とやってウインクをしたら、女の子も同じように「シーッ!」とやってウインクをした。
でも女の子はまだ小さいからウインクが上手くできなくて両目をつぶってしまった。
電車が次の駅につくと、レモンの親子は立ち上がり電車を降りた。
レモンの香りは僕のまわりに残った。
夏が終わる。
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