真夜中に目が覚めたのでキッチンに水を飲みに行くと二頭身の太った双子がいた。
双子のうち一人は口から昨日の世界を飲み込んでいて、もう一人の方は明日の世界を吐き出していた。
僕が驚いて眺めていたら、双子が僕に気がついて
「マズイなあ」とユニゾンでつぶやいた。
「あの、今、何をしてたんですか?」
「見た通りさ。昨日の世界を飲み込んで、明日の世界を吐き出してたんだ」
「あの、えと、世界ってそんなシステムだったんですか?」
「当然だろ。誰かが古い世界を飲み込んで、新しい世界を吐き出さないと、ずっと『同じ今』が続いてしまうぞ」
「ということは、あなた達は神様なんですね」
「神様か。発想が貧しいな。あのね、俺たちは古い世界を消して、新しい世界を描いているだけなの」
「ということはあなた達がこの世界を変えているんですね」
「ちょっと違うけど、まあそれでいいや」
「例えば僕が『大金持ちになりたい』と言えば可能なんでしょうか?」
「なんだ。そういうことか。じゃあその『大金持ち』とやらを願ってみな」
「はい。願ってみました。…あれ、まだ大金持ちじゃないですよ」
「それはおまえの願いが本物じゃないからだ。俺たちは『世界の意志』を受け止めてそれを描いてるんだ。世界の意志は歴史の必然や運命、俗に言う奇跡、あるいは誰かが真剣に祈る気持ち、そんなのが複雑にからみあってるんだ。で、おまえの願いは本物じゃないから俺たちのところまで届かない。ま、不採用ってやつだな」
「ということは、本気でお願いすればいつか願いは叶うってことですね」
「おまえ単純で良いヤツだな。気に入った。おまえの願い気にしとくよ」と言うと双子は消えた。
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