まだ僕が小さかった頃、おばあちゃんは韓国語と中国語が話せるということを聞いてびっくりした。
確かに僕のおばあちゃんは他の周りのおばあちゃん達と比べてかなり雰囲気が違った。
僕の父母は共働きだったので授業参観の時にはおばあちゃんが見に来てくれたのだけど、教室では完全に浮いていてすごく恥ずかしかった。
おばあちゃんは晩年の越路吹雪のような雰囲気で、映画女優みたいな大きい帽子を斜めにかぶり、すごく威圧感があった。
教室の他の生徒たちは「あの人、誰のおばあちゃん?」とこそこそ口にしたのだけど、僕は知らないフリをした。
僕の家は厳しくてTVの時間が制限されていたので、僕はこっそりとおばあちゃんの部屋にもぐりこんで、おばあちゃんのすごい煙草の煙の中でトムとジェリーを見た。
そう。おばあちゃんは僕の隣ですごくかっこよく煙草を吸った。
おばあちゃんよりかっこよく煙草を吸う人を僕はまだ見たことがない。
おばあちゃんは「戦争の時、満州に住んでいて、よく騎馬民族に追いかけられた」という話を何度もした。
僕は「騎馬民族に追いかけられる」って西部劇みたいな感じかな、と小さい頭で一生懸命想像してみた。
おばあちゃんの部屋の本棚には僕が知らないハングル文字で書かれた本があった。
僕はおばあちゃんがいない時にこっそりとその本を取り出した。
すると、その本棚の向こうから突然強いシベリアからの風が吹いてきて僕は吹き飛ばされそうになった。
僕は驚いて本棚に頭を突っ込むと馬が大地を駆け抜ける音が聞こえてきた。
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