川岸で白い和服を着た女性が赤い色を流していた。
近づいてのぞきこむと何かを染めているようだ。
女性が僕の方をちらりと見たので思い切ってきいてみた。
「何かを染めてるんですか?」
「ええ。時間を…」
「あの、時間って色が付いてるんですか?」
「もちろんです。すべての時間に色は付いてます。そしてその時間の色は私が染めています」
「僕この世界のことがどうやらよくわかっていないみたいで。例えば赤い時間はどういう時間なんですか?」
「あら、小さい子供みたいな質問をされるんですね。赤い時間のことなんて小学生になる前にお母さんに教えてもらうものですよ」
「すいません。常識のないやつだってよく友達からも言われるんです」
「赤い時間はもちろん激しい時間です。大好きな人を初めて抱きしめるときとか、憎むべき存在と戦うときとか、自分の死から逃げるときとか、わかりますか?」
「はい。なんとなく」
「でもね、赤い時間は世界には少ししかない時間なんです」
「はい」
「あなたは青い時間はどうでしょうか」
「青い時間?」
「一瞬の輝きを大切にする時間です。現実世界から一番離れた薄い空気が流れていて、人々は言葉をとても大切にあつかっています。めったなことでは感動の言葉を発しません。人間の美しい精神がほの暗く輝く時間です。青い時間に入りましょうか」
via
0 件のコメント:
コメントを投稿