夜が大きくため息をつくのが聞こえた。
夜だって生きてるんだ。
失敗もするだろうし、誰かに裏切られたりもするだろう。
僕は外に出て夜に話しかけた。
「君がため息なんて珍しいね。どうしたの?」
夜は答えた。「恋をしたんだ」
「ふーん。相手は月とか土星とか?あ、太陽ならやめた方が良いよ。君にはあってないと思う」
「いや、普通の女の子なんだ。図書館で働いている。絵本と詩集が担当で素敵な子なんだ」
「絵本と詩集が担当なんだ。じゃあその子に詩をプレゼントすれば良いんじゃないかな。君が無理なら僕が今度図書館に行く時についでに渡しておいてあげるよ」
「詩かあ。良いアイディアだね。じゃあ明日の夜までに何か素敵な詩を書いておくよ」と夜は答えた。
そして次の夜、僕は恋する夜から詩を預かった。
「ちょっと自信ないから封筒を開けてここで読んでみてよ」と夜が言うので読んでみた。
『僕は夜。
真夜中になると夜の階段をゆっくりと降りて、ぐっすりと眠っている君の夢のところまで行くよ。
静かな夜。
時々聞こえてくるのは星が瞬く音。
星が瞬く音って聞いたことあるかな。
今度耳をすませて聞いてみてよ。
僕が君のために世界を静かにしておくから』
僕は感想を言った。
「うーん、詩じゃないけど良いんじゃないかな。君の感じがよく出てるよ」
夜が恥ずかしそうに笑った。
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